顔認証システムは、オフィスの入退出管理や勤怠管理、ショッピングの決済、マーケティング施策など、ここ数年で様々なシーンでの活用が急速に進んでいます。しかし、使い方がよく分からない、セキュリティ面でのリスクなどあるのではと、なかなか導入に踏み切れないという会社も多いのではないでしょうか。
今回は、顔認証システムの仕組みと、顔認証技術が注目されるようになった社会背景、そして顔認証システムの問題点とそれに対する対応策などについて、具体的な例を挙げながら解説します。
顔認証システムとは?
顔認証システムとは個人の体が持つ特徴によって認証を行う「生体認証システム」の1つです。生体認証システムには、顔認証以外に指紋認証や静脈認証などがあります。
顔認証システムは、カメラで撮影した画像や映像から顔を見つけて、同一人物かどうかの本人確認をする技術です。https://aize.jp/face-recognition-system/
顔認証システムの仕組み
顔認証システムでは、AIがカメラで撮影された画像や動画から人の顔を検出し、顔の特徴、目や鼻や口などの位置や大きさ、輪郭の形状といった情報をもとに、あらかじめ登録されている顔データと照合するまでの一連の処理をします。検出のスピードと照合の精度によって、それぞれの顔認証システムに機能の違いがでます。
顔認証システムが注目されるようになった社会背景
なぜ今、顔認証システムが注目されているのでしょうか。
要因として考えられるのは、法人、個人に限らず世の中においてセキュリティ対策やリスクマネジメントが重要となってきたからです。
機密情報や個人情報を狙ってのサイバー攻撃などの脅威が増えたり、なりすましによるクレジットカードの不正利用なども多く発生したりしています。経済産業省は、ECサイト運営者に対して、クレジットカード決済時の生体認証による本人確認を2025年までに義務付けることも決めました。
そのような社会背景があり、複製が難しくセキュリティレベルの高い顔認証システムが注目されるようになってきたのです。
コロナ禍においては、非接触での認証で感染症対策も実現可能ということで更に需要が高まりました。
顔認証システムのメリット
セキュリティ対策として広がってきた顔認証システム。そんな顔認証システムにはどんなメリットがあるのでしょうか。特徴を詳しくみていきましょう。
なりすまし防止
なんといっても、顔認証システムはなりすましなどの不正利用がされにくい点が一番のメリットではないでしょうか。
IDやICカードを使用した本人確認は、そのカードさえ手元にあればだれでも認証することができるので複製や盗難といったリスクがありますが、顔認証システムは、第三者が行うことが不可能なので、なりすましなどの不正や犯罪を防止することが期待されます。
パスワード入力が省略可能
パスワードを使った認証システムは、パスワードを覚えておく必要があり、定期的な変更も求められます。また、入力時に覗き見されて悪用されてしまうリスクもあります。
しかし、顔認証システムはパスワードレスです。パスワードを管理する必要も入力する必要もない点は、顔認証システムの大きなメリットではないでしょうか。
大量のデータを高速に処理し分析することが可能
AIがディープラーニングの技術を獲得することで大量のデータを一度に高速処理し、分析まですることが可能になりました。顔認証システムは、人の手に負えない膨大な量のデータを集めて蓄積、処理、複雑な分析まで可能にします。
顔認証の詳しいメリットについては下記記事でご紹介しています。
顔認証システムとは? 仕組みやメリット、最新の活用事例をご紹介 | 顔認証のAIZE・AIを使った課題解決型顔認証ソリューション
顔認証システムの問題点
では、顔認証システムに問題点はないのでしょうか。
プライバシー問題
顔データは、本人を特定することが可能なので個人情報に該当します。そのため、個人情報保護の観点から、顔を登録する際は本人の同意を得てから取得することや、顔データを暗号化して管理するなど、プライバシーに配慮した対策が必要です。
導入する際は、運用方法やデータの取り扱いについてのガイドラインを作成しておきましょう。
精度によっては誤認証など発生
認証技術が発展している顔認証システムですが、製品によって精度が異なります。
精度の低いものは誤認証が発生し、トラブル対応など余計な業務が増えてしまったり、代替のためのツールで追加コストがかかってしまったりすることもあります。製品によってはメガネやマスク、髪型の変化に対応できない製品などもあります。カメラに映りこむ情報量の多さの影響や、外光や照明などの影響で認証精度が落ちてしまうこともあります。
個人情報の流出時の影響が大きい
顔認証システムは偽造ができない分、セキュリティのレベルは高いのですが、万が一漏洩してしまうと社会的な信頼を損ねる、自社の損失につながるなど様々なリスクに発展します。
個人番号や運転免許証の番号、電子取引などに使用するパスワードは、流出後に変更することが可能ですが「顔」データの場合はそうもいきません。
顔認証システムの問題点に対する対応策
そんな顔認証システムの問題点への対応策について考えていきましょう。
精度の高い顔認証システムを使用する
言うまでもありませんが、導入の際は精度の高い顔認証システムを選びましょう。また、設置場所が、外光や照明などの影響を受けないかどうか事前に検討することも必要です。
トリプルアイズが独自に開発した画像認識プラットフォームAIZEは、囲碁AIの研究から生まれたもので、世界最大級、500次元以上の顔の特徴量によって認証率を高めています。正面画像であれば99%の認証率となっています。カメラからクラウドに画像データを送信し、ディープラーニングの手法でAIが解析します。
難しいといわれていたマスク認証については、手本になるAIモデルがないため、自社で検索アプローチやデータアプローチを繰り返し、現在では(2021年4月時点)、マスク着用時の認証率98%を実現しました。
参考:https://aize.jp/face-recognition-face-mask/
精度の高い顔認証システムの見分け方
では精度の高い顔認証システムはどうやって見分けるとよいのでしょうか。
これに関しては、顔認証の利用シーンや環境によって、各認証エンジンで得意・不得意があるため、顔認証を利用したいシーンに合わせて選定するのが良いと思います。利用シーンとしては、正面静止・ウォークスルー認証なのか、環境でいうと屋内・屋外なのか特定環境下(工場内、トンネル内)などが挙げられます。
他には、NIST(米国国立標準技術研究所)のような第三者評価機関の顔認証テストの評価結果が指標になります。
導入の際は、これらの観点を踏まえ利用シーンのデータを取得し、各顔認証システムのAPI・SDKを用いて、認証精度・速度を比較・評価したのち選定するのが良いと思います。
その他の認証システムとの併用でセキュリティレベルをアップ
顔認証システムと他の認証システムを併用することで、セキュリティレベルをアップさせるのも良いでしょう。
2つ以上の異なる要素を組み合わせることにより、強度を高める多要素認証という認証方法があります。顔認証システムにプラスして、SMS(ショートメッセージサービス)で通知されるワンタイムパスワードなど、ユーザーが所持している情報を追加で入力する方法などが例として挙げられます。
セキュリティ強化はユーザーの安心感を高めることにつながります。
個人情報取り扱いに対するリテラシー向上とアクセス制限
個人情報の流出のリスクヘッジとしては、日頃の研修等で社員全員の個人情報の取り扱いに対するリテラシーを上げておくことはもちろんのこと、顔認証システムの導入前に管理方法や運用ルールについて周知徹底しておくことが重要です。
アクセス制限をし、管理者のみがデータを確認できるようにしておくこともお薦めします。
顔認証の活用事例
ここからは、顔認証システムがどこでどのように使われているのかが分かる、具体的な活用シーンをご紹介します。
スマートフォン iPhoneによる顔認証
皆さんの一番身近な顔認証システムといえば、iPhoneのFace IDではないでしょうか。
スマートフォンのインカメラで顔をうつし、目や鼻や口などの位置や輪郭の形状といった情報をもとに、事前に登録されている本人の顔データと照合、認証してスマートフォンのロックを解除するというものです。
顔認証システムを活用した勤怠管理
最近少しずつ増えつつあるのが、顔認証システムを活用した勤怠管理です。
トリプルアイズが提供する、AIZE Bizは、事前に従業員の顔データを登録しておくと、オフィス入口に設置したタブレットや自宅のPCカメラ、外出先のスマホカメラを介して、AIエンジンが本人認証し、出退勤の打刻をすることが可能です。
出退勤時の顔画像を一定期間クラウド上に残し、不正な打刻を防止します。タイムカードもPC入力も不要で、テレワークにも対応しています。
また、オフィスでは、同時に検温もできる機器を使用することで、勤怠管理と感染対策も同時におこなうことが可能です。
参考:https://aizebiz.jp/
顔認証システムを活用したマーケティング
マーケティング分野でも顔認証システムの活用シーンがあります。店舗やイベント会場での例をご紹介しましょう。
店舗や会場の入口に顔認証システムを搭載したカメラを設置します。そのカメラで取得した顔画像データをAIが解析することで、曜日・時間帯別の人数や男女比率、顧客の年齢層といった属性、リピート比率などといったリアルなデータを取得できます。その分析結果をもとに、店舗のオペレーション、ターゲット顧客に合わせたメニューの開発や商品陳列に活かすというものです。
顔認証技術で来場者の属性を「見える化」するクラウドシステム、トリプルアイズのAIZE Researchは各分野で導入が進んでいます。
参考:https://aize.jp/casestudys/(導入事例)
顔認証システムを活用した決済
2020年2月28日、大手家電量販店のヤマダ電機は量販店では日本で初めてとなる顔認証決済サービス「ヤマダPay」をスタートしました。
顧客が、あらかじめスマホから自分の顔画像を登録しておくことにより、来店時にカメラに顔をかざすだけで買い物ができる仕組みです。財布もカードも不要な新しい消費スタイルが登場しました。この本人認証を受け持つ顔認証AIにはトリプルアイズの画像認識プラットフォーム・AIZEが採用されています。
顔認証システムの問題点への対策をして、パスワードレス社会を実現
顔認証システムには、個人情報の取り扱いやプライバシー問題、システムの精度によっては 誤認証が発生することもあるといった問題点が少なからずあります。
しかし、IDやICカードいらずの顔認証システムは、昨今増えているなりすましによるクレジットカードの不正利用防止が期待できることやパスワードレスといったメリットもあります。大量のデータを高速に処理し分析することも可能です。
想像以上に皆さんの身近なところに増えている顔認証システム、上記でご紹介したような問題点に対する対策を取りつつ、上手に活用し、効率化やリスクヘッジといったビジネス効果を得ていきたいものです。
顔認証システムによるパスワードレス社会の実現は着々と進んでいます。
もっと詳しく顔認証システムのサービスについて知りたい方はこちらまで。https://aize.jp/