CASE STUDY

AIZEが活用される尼崎城

城とAI──公的集客施設においてAIに期待すること

城とAI──公的集客施設においてAIに期待すること

■146年の時を経てよみがえった尼崎城

阪神・尼崎駅のホームに降り立つと、優美な屋根勾配の大天守閣が出迎えてくれる。
平成最後の築城と話題になった尼崎城である。
尼崎城は、夏の陣後、江戸幕府が西国支配の拠点とするため、1617年(元和3年)、譜代大名戸田氏鉄に築城させ西の守りとした。
甲子園球場の約3.5倍にも相当する、3重の堀、4層の天守を持つ広大な城として数年の歳月をかけて築造された。
尼崎は、江戸期を通して阪神間随一の城下町として大いに栄えたが、明治時代になると、その役割を終え、1873年(明治6年)に廃城、城は取り壊され、堀も埋められていった。
2015年、旧家電量販店の創業者である安保詮氏から、創業の地である尼崎において尼崎城を建築し、市に寄附する意向が示され、2018年11月30日竣工、2019年(平成31年)3月29日、146年の時を経て往時の偉容を人々の前に現すこととなった。

■城と街の歴史を知る充実した体験コーナー

残された絵図などを基に再現された鉄筋コンクリート造りの城は4層で内部は5階まである。城の周囲は公園が整備され、輝くような白壁に千鳥破風、唐破風の瓦屋根が美しく映え、写真撮影スポットとして人気である。城郭構造を間近に見ることができるので、城マニアにも人気とのこと。
城内はエレベーターによって行き来ができる。子供からお年寄りまで楽しめる城体験をコンセプトとしている。1階は「まちあるきゾーン」として尼崎の魅力を紹介した映像が楽しめるほか、尼崎名物が揃ったショップを併設している。2階は「尼崎城ゾーン」でVRシアターや、剣術&鉄砲の体験コーナーなど遊びながら学べるコンテンツが満載のエリア。3階は「なりきり体験ゾーン」で、金のふすまを背景に忍者や武者の衣装を身につけて記念撮影ができる人気のコーナーだ。4階は「ギャラリーゾーン」で尼崎が生んだ城郭画家、荻原一青の作品などを展示している。5階は「わがまち展望ゾーン」で、尼崎の街並みが眺められ、タブレット端末では江戸時代の城下町を再現している。
現在は尼崎市が周囲の公園と合わせて所有・管理している。

2階にある剣術&鉄砲の体験コーナー

2階にある剣術&鉄砲の体験コーナー

■コロナで客層ターゲットを市民中心にシフト

尼崎城では、コロナ感染対策と来客者の分析を兼ね、サーモ機型の非接触自動検温機AIZE Research+を2021年11月に導入している。自治体が運営する集客施設、歴史施設において、AIはどんな役割を果たすことができるのか、家老・統括責任者である漆原均さんと同じく家老・運営責任者である豊永陽子さんのお二人に話を伺った。

2022年4月5日取材

家老・統括責任者 漆原均さん

家老・統括責任者 漆原均さん

家老・運営責任者 豊永陽子さん

家老・運営責任者 豊永陽子さん

――お城の公開から1年を待たずしてコロナ禍に見舞われました。来客者層も大きく変わったのでしょうね。

漆原 はい。コロナ以前は、遠方からお客様もかなり来られていたのですが、緊急事態宣言が明けた後は、もっぱら市民の方や関西圏にお住まいの方が主流になっています。

――集客の戦略にも影響があったのでしょうか。

漆原 遠方からのお客様は一期一会の訪問だと思いますが、市民の方々はリピーターになりうるので、その方達が楽しめるようなイベントを多く企画するようにしました。

豊永陽子さん(以下、豊永)具体的には親子で楽しめるワークショップを定期的に開催しています。ミニ凧作りや雛祭りのかんむりや扇子作り、鯉のぼりやてるてる坊主作りなど、季節ごとに日本の年中行事を意識したワークショップを開催してご好評いただいています。また、プロの写真家をお招きして「撮りモノ帖」という撮影会も随時開催しており、こちらもリピーターの獲得に貢献しています。歌って踊れるPRユニット「尼崎城三人衆」にも女性ファンの方が増えています。

■人手を介さない検温と記録がスタッフの労力を軽減

――AIZE Research+を導入されたのは、どんなきっかけがあったのでしょうか。

漆原 まずは感染症対策ですね。休日ともなると多くのお客様がお見えになりますから、人手を介しての検温は困難です。入口に設置しておけば、アナウンスなしでも検温してくださるので、大変助かっています。高温が測定されるとリアルタイムで通知がきますので、再検温をお願いしております。

お城入口に置かれた自動検温機AIZE Research+

お城入口に置かれた自動検温機AIZE Research+

豊永 検温記録が自動で保存されるのも便利ですね。手入力だとどうしてもミスは防げませんし、日別、月別に記録を集約する手間を考えると、AIZEを導入して本当に良かったと思います。

――来客分析の機能はいかがでしょうか。

漆原 今は主に検温に使用していますが、来客者の属性分析には強力なツールだと感じています。お客様の個人情報に紐づけない形で利用できるというのが、私どもにとっても安心できるところです。まだ、本来の機能をフルに活用できているとは言い難いですが、客層全体を把握するうえではとても役立っています。

■AI活用のハードルが下がることで公的施設でも魅力的なサービスが実現できる

――尼崎城のような公的な集客施設においてAIはどんな活用が考えられるでしょうか。

漆原 実は、いろんなことを考えています。市民目線でのサービスにシフトしているのですが、AIで分析することでもっときめ細かでニーズにフィットしたサービスが提供できるのではないかと考えているからです。

――具体的にはどんなことでしょうか。

漆原 今は入口に1台しかAIZEを設置していませんが、本当は各フロアにカメラを置いて、フロアごと時間ごとの客数や来客者属性、また混雑具合や館内での人の動き(人流)などもAIで測定できればと思っています。

豊永 肌感覚ではなく、データを元に仮説を立てて企画に活かすことができれば、今までとりこぼしていたお客様の掘り起こしにつながるかもしれません。

――まさに弊社が取り組んでいる、人数カウントカメラや人流測定サービスが活用できそうなお話ですね。

漆原 これまで自治体が運営する施設では、予算的にも人員的にも制約があり、現状維持に傾きがちでした。これからは、AI活用のハードルが下がることによって、そうした制約もなくなっていくと思います。サービスを更新することで、市民の皆さんに喜んでもらえるようなことが実現できると思っています。トリプルアイズさんには、そんな動きをサポートしてくださることを期待しています。

(了)

AIZEが活用される尼崎城