第3回 残された最後の戦場「囲碁」

ITベンチャー社長のAIブログ

テクノロジーに想像力を載せる

 

皆さんこんにちは。

引き続き、私の著書『テクノロジー・ファースト〜なぜ日本企業はAI、ブロックチェーン、IoTを牽引できないのか?』を基礎テキストにして、日本のDXについて思うところを綴っていきたいと思います。

 

どうかお付き合いください。

 

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第1章 ゲーム盤の向こうにある戦争

−囲碁AI国際大会が突きつけるが覇権争いの行方

 

 

残された最後の戦場「囲碁」

 

私たちが囲碁AIの開発を始めたのは2014年からだ。そのころはまだ囲碁AIにも、囲碁AIの大会にも世間の注目はあまり集まっていなかった。

それがあるときから明らかにメディアの取材が増えた。

ディープマインド社(2010年起業、2014年にグーグルが買収)の「アルファ碁」が韓国のイ・セドル九段を破り、ついに人類がコンピュータに負けたとセンセーショナルなニュースが世界を駆け巡ったのが、2016年3月15日のことである。

その直後、同年3月19、20日に開催された第9回UEC杯コンピュータ囲碁大会は、詰めかけたメディアの熱気と夢の実現を目の当たりにした参加者たちの興奮に会場が包まれていたことを、大会に参加していた私はよく覚えている。

私は以前から囲碁AIに注目していた。それは人とAIが勝負をする古典的なボードゲームにおいて、囲碁が最後の砦だったからだ。チェスと将棋はすでに人間がAIに敗北していた。人間にまだ勝利していない囲碁で、最初に人間に勝つAIを開発してみたいと思っていたのだ。

人とAIによる盤上の戦いの歴史は意外に古い。

チェスへのアプローチは、1950年前後の人工知能研究の黎明期から始まっている。チェスをプレイできるプログラムができたのは1958年。AIは1960年代には、やや強いアマチュアレベルにまで力を上げ、1980年代にはグランドマスターという最高位レベルの強さに達した。早くも1997年には、IBMの「ディープブルー(DeepBlue)」が、当時の世界チャンピオン、ガルリ・カスパロフに勝利した。

このときに言われたのは、将棋はチェスと異なり、持ち駒を再利用できて複雑だから、まだまだコンピュータは人間にかなわないということだ。

たしかにその見方は間違いとも言い切れなかった。将棋を指すプログラムの研究開発は1970年代半ばから始まっていた。1990年代まではハードウェアの性能が足りないこともあり詰将棋のレベルにとどまっていたが、一旦、ブレイクスルーが起きれば進化のスピードは早い。2006年に「ボナンザ(Bonanza)」が新技術をもって世界コンピュータ将棋選手権に初出場、初優勝を果たすと、2000年代の後半にはトッププロ棋士に勝利するようになる。

ただこのときも囲碁だけは話は別だった。コンピュータが囲碁のプロ棋士を攻略するには10年、もしくは20年かかるといわれた。

囲碁を打つプログラムの研究は将棋よりも古く、1960年代から始められたとされる。当然、研究はなかなか進まなかった。縦19×横19と盤面が広いだけでなく、碁石には将棋やチェスの駒と違って個性がなく、非常に多様な石の連なりで意味や価値を形成する。そのため、強さを評価する関数の設計が悪夢のように難しかったのだ。また、一手ごとの選択肢の数でいっても、10の120乗といわれるチェスや10の220乗といわれる将棋に対し、囲碁は実に10の360乗もある。チェスや将棋に比べれば、囲碁のプログラムが天文学的に複雑になることがわかってもらえるだろう。

囲碁AIが、ようやく強くなりはじめたのは2000年代後半のことである。フランスのレミ・クーロン氏が、「モンテカルロ木探索」という新しいアプローチを採用した「クレイジーストーン(Crazy Stone)」を開発して、囲碁AIのレベルを数段階ひきあげたのだ。

 

『テクノロジー・ファースト』「第1章」より抜粋

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解説

 

囲碁AIの開発をやっているので、さぞかし囲碁の腕前も…と思われがちですが、実は開発前には少しかじっていたぐらいで6級でした。開発をしていくうちに腕を上げて、現在は2級です。

 

むしろ得意なのは将棋で、現在4段です。私の将棋好きを知ってか知らずか、なぜか会社に有段者が集まりはじめ、ここ数年は将棋採用を行ったこともあり、社内の将棋部は職団戦の全国リーグでトップを争うまでになりました。

 

そもそも私が将棋を始めたのは小学校の低学年の頃。父親が会社(日産自動車)の将棋部に所属しており、職団戦に出ていたことも将棋に興味を持つきっかけとなりました。父親は初段の腕前で、私を相手に家でよく指してくれたものです。

高学年になると学校の将棋クラブに入って、毎週土曜日に教室で将棋を指していたことを思い出します。

 

中学、高校では親離れすると同時に将棋からも離れていましたが、大学に入ると将棋部があったので入部しました。バレーボール部との掛け持ちです。

将棋部では私が一番強く、理事にも選ばれ、他大学との交流戦の日程などを任されました。世の中がちょうど、羽生善治棋士の7冠達成に湧いていた頃です。

 

ちなみに囲碁部も部室が一緒だったので、囲碁を覚えたのもその頃です。

その当時は、囲碁AIの大会で日本一になる会社の経営者になろうとは夢にも思っていなかったのですから、人生は面白いものです。

 

現在も将棋との縁は続いています。所司一門将棋センターを子会社にして、所司一門である渡辺明名人を応援したり、小中学生の大会を開いているのも、将棋文化を絶やしたくない、将棋の楽しさをもっと世間の人に知ってほしいという思いがあるからです。

 

第3回了

 

 

 

 

 

 

 

◼︎ 福原智(ふくはら・さとし)プロフィール

 

株式会社トリプルアイズ代表取締役。BCCC(ブロックチェーン推進協会)理事。

1975年、神奈川県生まれ。山形大学理学部物理学科卒。

大手通信基幹システムのメイン開発プログラマーとして参画。

2008年トリプルアイズを創立。技術者集団を率いて独自のAI研究開発に取り組み、囲碁AI世界大会では4位入賞。

著作『テクノロジー・ファースト-なぜ日本企業はAI、ブロックチェーン、IoTを牽引できないのか?』(2018年/朝日新聞出版)は業界内外の好評を得ている。

 

 

 

 

■基礎テキスト紹介

『テクノロジー・ファースト〜なぜ日本企業はAI、ブロックチェーン、IoTを牽引できないのか?』(発行:眞人堂、発売:朝日新聞出版)

 

目次

 

はじめに 〜われわれはどこから来たのか?

第1章 ゲーム盤の向こうにある戦争

−囲碁AI国際大会が突きつけるが覇権争いの行方

第2章 ビッグデータという資源の獲得を競う現在

−4回目の産業革命と、IT開発4度目の波

第3章 テクノロジーへの古い固定観念に囚われた日本

−第5世代コンピュータに始まる挫折の歴史

第4章 産業革命0の本番はこれからの50年にある

−分野を超えて共振するテクノロジー

第5章 ポスト・ディープラーニングを掘り当てろ!

−ブロックチェーンとIoT、AIの本質

第6章 テクノロジー・ファーストのIT企業だけが未来を見る

−IT企業の経営者が持つべき使命

おわりに 〜われわれはどこへ行くのか?

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